■手術前夜

 部屋に戻ってまもなく、呼び出しがあった。
 剃毛だ。

 昔は前の毛まで剃った時代もあったようだが、今はそれこそ肛門の周囲のみである。
 会話しながら手早く処置が済む。

 3時過ぎにまた呼び出しがあり、外来の診察室で医師による診察を受けた。
 明日手術を受ける対象者の状況を把握し、順番を決めるのだそうだ。
 あとで連絡があり、大腸検査は午後1:00、手術は午後3:30となった。



 6:00。待ちに待った夕食である。
…風呂上りに家族に報告した。

「夕食は、まずスープが出たよ」
「へえー」

「ただし具なしだけどね。それにオレンジジュースだ」
「両方とも、液体じゃない」

「いや、もう一つあるんだ」
「何?」(興味津々)

「コーヒーだ」
 電話の向こうは大爆笑である。

 そして「なるほどね」という。
「何が?」
 オレンジは下痢のときに食べるなといわれるくらいの果物だ。
 オレンジは便を出し、コーヒーには利尿作用があるということらしい。
 この変な組み合わせには、合理的な意味があったのだ。

 看護婦から「元看護婦だったの?」と尋ねられたくらいの女房である。
 この辺のことは詳しい。



 食堂で話が弾んだので、7:30ころにあわてて風呂に入りに行った。
 7:00から8:00までが2回目の男性タイムのリミットである。

 これは噂にたがわぬ豪華な風呂だった。
 風呂場の横にはゆったりしたソファーの談話室があり、ここだけ見るとまるで温泉宿である。



 9:00消灯。
 隣の人はTVを見ている様子。
 イヤホンなので音は聞こえないが、カーテンにいろんな色が踊っている。

 寝しなは少々肌寒く、夏用の寝巻きの上にTシャツを着込んだ(尚、あとで分かったが、エアコンは各部屋ごとに調整できるようになっている。

 退院前夜まで、調節できることを知らない方もいた。
 エアコンの説明も事前にあるとありがたい。

 覚えていないが、何度か夢を見、そのたびに目が覚めた。
 看護婦も1度見回りに来、同室の方も時折トイレに立ったりしていたようだ。

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