■小水との格闘

 ベッドに戻ったときは、まだ3:00前である。
 手術自体はものの30分かそこらであろう。
 天下一品の手際だ。

 ナースさんたちも手馴れもので、身動きできない私の体をさっさともといたベッドに収めてしまった。

 TV台の上にナースに買っておいてもらったお茶の缶が5つ。
 これから夜中の0時までに小水を出すようにとのこと。
 でなければ、管だそうだ。

 これはなんとしても出さねばならぬ。
 目標は下半身の痺れが取れてくる3、4時間後だ。



 痺れはつま先から徐々に取れてきた。
 しかし、当然ながら腰周りは睾丸の部分まで含めて感覚がない。

 ところが、お茶を既に3缶空けているので、膀胱は満タンだ。
 痺れが取れるという7:00頃には、もうはちきれんばかりに痛くなってきた。
 尿瓶は横になったまま使うように言われたが、それではとても出そうにない。

 とにかく試す他はないと尿瓶をベッドのふちに置き、ベッドを腰の高さにまで上げて、ちょうどベッドから降りて立った時に、尿瓶の口にそのまま突っ込めるよう調節する。

 降り立ったときにさすがに痺れでふらついた。
 なるほど、歩行禁止にされるわけだ。
 二次被害が起こりかねない。



 さて、はちきれんばかりの膀胱をなだめながら、押したり力を入れたりゆすったり。
 便秘のときに小水が出にくいのと似ていたが、こんなにも前と後ろが連動しているとは思わなかった。 

 格闘すること30分(!)あまり。

 ようやく糸を引くような小水が出てきたときは、ああ、これで破裂しないですむとほっとしたものだ。

 しかし、流れている実感はあまりなく、力を緩めると止まってしまう。
 1,2割程度しか出ていなかったと思うが、第1回目はこれで打ち止め。

 その後、第2回目を経、10:00ころ、第3回目。
 このときに、ようやく出している感覚をつかむことができた。
 出し切ってはいないが、明日の朝までは持つだろうと、これで格闘を終わりにした。

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