■手術百景

 ここで、人それぞれに違う手術の様子をまとめて書いておこう。

 同室のS君は、それまでなんともなかったのに、台車に乗せられた途端に体が震えだし、自分でもいかんともしがたくひざまで震えていたので、麻酔を効かせてもらい、おかげで手術のことは何にも覚えていないという。
 気づいたらベッドの上。
 小水は最初からスムーズに出たという。



 同じく麻酔で瞬く間に眠くなり、気がついたときはすでに採尿管もつけられてベッドの上だったという人もいる。
 何しろ下半身の感覚がまったくないので採尿管があってよかったと言っていた。



 小水で難儀したのは、Fさん。
 午前中に手術が終わった彼は、夕方4時までに小水が出ないとチューブだ、と脅されて、瞬く間に缶を4つ開けた。
 膀胱ははちきれんばかりになるが出ない。
 私と一緒である。

 一挙に飲みすぎても出にくい、と別の看護婦に言われたが、いまさら言われても…。
 そのうち、脂汗が出てきて、ついにギブアップ。
 ナースコールした。

 膀胱に届かせるために、20cmは突っ込まれたという。
 入れるときはさすがにちくっと痛かったそうだ。
 入った瞬間、一挙にあふれ出し、すーっと軽くなったという。
 一缶が明暗分けたかも。



 出なくて、熱を出した人もいる。
 Bさんは、手術後2日間小水が出ず、発熱してしまった。
 眠れない夜を過ごした挙句、結局チューブの御用となり、入院も長引くこととなった。



 麻酔の効き方もそれぞれである。
 私みたいに意識がしっかりしている人もいれば、寝てしまって気づいたらベッドの上という人もいる。
 術後の患部の痛みも、私のようにほとんど痛みのない人もいれば、痛みのある人もいる。
 痛くて、手術後の1日泣き通しだった女性もいるようだ(その女性も笑顔で退院していったが)。切った部位、手術の内容によるのだろうか。

 また、私の場合麻酔の後遺症はなかったが、2日間ほど頭がボーっとしたという人もいた。

 まことに人それぞれである。

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