■入院者たちA

 夕食時。
 明日退院というGさんがいる。
 彼は、個人でファミ レスを経営している。

 巨大団地と大学の中間地点に作ったファミレスは、瞬く間に時流に乗り大型化。
 当時は団地の値も、3000万から4000、5000と見る間にうなぎのぼり。
 それでも、買い手がつき、都心のマンションを売り払って移住してきた住人たちは余力があり、よく食べに来てくれた。

 親の金は学生にも回り、学生もよく来た。
 建設現場が近いため、工事業者もよく来た。
 車に興味なかったが、税理士が税務対策ということで、ベンツにはじまり、シーマ等の大型車。子どもにセルシオ!
 自宅は、建築業者に乗せられ、1億数千万に。

 外食産業が活況を呈した時代。
 まさにバブルの王様に上り詰めた。

 ガタッときたのは、平成10年ころから。
 それ以前にも、不況の風聞は聞いていたが、田舎は少し遅れてやってきた。
 まず、工事業者がこなくなった。
 学生も来なくなった。
 マンションの住人たちは巨額の借金が残り、外食を減らした。

 経営者としてここまで一人できりもりしてきたが、この入院がひとつの転機かもしれない、と彼はいう。



 物静かなA君は、海自で航空機の整備をしている整備士。
 おじが整備士だったという。
 海自に入り、その後海自の中の学校で勉強して整備士になった。

 あの対潜哨戒機などの整備をしているのだそうだ。
 車などが数年でモデルチェンジするのに比べ、航空機は30年単位であるから、一度技術をマスターすれば、それこそ定年まで食っていけるという。

 痔の話をしたら、実は俺も、と結構隠れ痔の仲間が名乗りを上げたそうだ。
 座りっぱなしのパイロットなどに多いという。
 自衛隊は独自の病院をいくつか持っており、そこに行くと無料となるらしいが、痔については、皆ここに来るのだという。



 有名なお嬢様学校の本部でインターネットの整備をしているTさん。
 その学校は、幼年部から小・中・高・大と、ミッション系の女子校を北海道から九州まで擁している。
 エスカレーター式なので、「お受験」に始まるが、何と幼稚園が1日2時間で月10万円。いずこも同じだが、上から下までブランドをまとった奥様方の派閥がすごいらしい。

 ところで彼の場合は、いきなりの腹痛から始まった。
 歯が膿んだときのような痛みが、腸のあたりから前触れもなく起こったので、これは腸が腐っているのでは!と、家族に内緒でかけこんだという。
 細菌感染による痔ろうでした。
 痔もなかったため、まさしく交通事故にあったようなもの。



 小学校の保健婦をやっている適齢期のRさん。
 いまや小学校は、子どもと老人ばかりという。
 転勤して交代があっても、教員は40代以上がほとんどで、休み時間には肩で息をしている始末。子ども相手にはお辛い年頃。
 しかし、少子化で学校の統廃合があり教員が余る中で、フレッシュマンの入る余地はない。

 中学校も同じ状況で、同年代の"相手"が見つからないのが悩みの種。
 へえ、今時はそういう状況なの、そこにいた全員が驚きました。



 大学で就職指導をしているBさん。
 大手企業の採用の仕方が変わったという。
 これまでを10とすると、2,3割しかとらなくなった。

 つまり、コア社員のみを採用し、あとは派遣その他で賄うという腹だ。
 コア社員だけ確保できればいいから、この先労働力人口が減るといわれても別に大きな問題ではないという企業もあるようだ。

 Bさんの部屋に石原S太郎の秘書が一泊二日で入ってきたそうだ。
 休んでいられないということで、土曜に入ってきて日曜日には出ていたという。
 お忙しいことで。



 ハート館にも忙しい方がいた。
 例のファイアストンVS フォードの問題で、今ブリジストンからファイアストンへ派遣されている方だ。
 米国にいい痔の施設がないとのことで、ここで治療後再び米国に飛ぶのだという。



 いろんな人がいる。
 いろんな人生がある。

 お尻から見ればただの人、
 看護婦から見ればただの痔主である。

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