大学生のW君は、39度の熱と下腹の痛みを抱えて総合病院に行った。 何しろ名だたる大学のメディカルセンターである。 まず、内科を受診。 痔の話もしたが、外から見ても切れ痔があるわけではなく内科医にはわからない。 外科にでもリファー(紹介)してくれればよいものを、それをしない。 ならば、総合病院の意味がないではないか。 ともあれ座薬の鎮痛剤をさしこまれ、これが触ったらしい。 帰りは一歩歩くごとに激痛が走り、そろりと踏み出してはしばらく立ち止まり、ということを繰り返して、病院から自宅までのわずか200mに1時間かかったという。 ようやくたどり着いた時は、運悪く両親はご不幸があったために家を空けることになった。指一本動かしても激痛が走るT君は、両親のいない中、身動きもできずに寝ているしかなかった。 かろうじて、痛み止めを3回分まとめて飲んだときに少し和らぎ、その寸隙を縫って這って水を補給に行き、薬をいつでも飲めるように、プチプチプチ、とパッケージから出すだけ出した。痛みの激しいときは、このプチすらできないのだという。 それからは、痛みと熱で、記憶が途切れ途切れになる。 いったい今がいつか時間も定かではない。 「人間も泡を含んですねえ」 という。 漫画では見たことがあるが、気づくと自分の口の端に泡が吹いていたという。 どうやら、痛みで失神していたらしい。 …さて、帰ってきた両親が見たのは、台所で突っ伏して倒れているT君と、その周りに散乱している薬である。 発見されて始めてT君は、3日経っていたことが判ったという。 さて、激痛の元は痔ろうの膿であった。 それが何の拍子か破裂し、膿が流れ出た。 パンツの中に両手一杯(!)ほどの膿がたまったという。 その瞬間、激痛は去り、何と両腕も体も動くようになった。 そこで、彼は猛然とインターネットで原因を調べた。 そして、予想だにしなかった痔ろうであるらしい、ということがわかった。 今度は同センターの外科に行った。 小さく、「肛門」とも書いてあったからだ。 行くとすぐ、膿が出きっていないというので執刀されることになる。 肛門にいきなり直接の注射。 飛び上がるように痛い。 そして、麻酔が効き始める前に何とメスを入れられた(!!)。 目の前の鉄棒を片手で握り締め、もう片方の手でバンバン叩いて 「痛い!痛い!!」と訴える。 その後ようやく効いてきたが、その痛みが抜けなかったという。 その後も4日ほど唸っていたらしい。 こういう苦労の末、もう総合病院はいやだということで、彼は再びインターネットで前門病院を探し、ここを探り当てたというわけだ。 辛い思いをしたものだ。 ここならば、まずその日に切って膿を出すという1泊の応急処置をしておき、後日再入院して本格治療というコースで、痛みもなくスムーズに進んだことであろう。 |