さわやかな朝が明けた。 窓を開けるとセミの声。 涼やかなそよ風に薄いグリーンのカーテンが揺らめいている。 柔らかいグリーンに包まれ、確かに気持ちの良い空間だなあ、と改めて感じる。 今朝の便は、いきまずとも出た。 先生が練り歯磨き程度の硬さの便が良い、と言われていたが、ちょうどそのような軟便で痛みも比較的少なくほっとした。 そして、人間ドック用の検便も採取。 これで全ておしまいである。 ただ、排便後はやはり熱っぽいような痛みが続く。 入浴してリラックスすれば引くような痛みで、自宅では風呂を多用しようと思う。 尚、ここでは、便を柔らかくするために漢方の乙字湯を勧めている。 しばらく利用してみたい。 最後の朝食に最後の入浴、そして最後の診察。 やることなすこと"最後"がつく。 診察では、肛門の傷の経過は順調であったが、アテローマの縫合部分がまだくっついていない。ちょうど張力のかかる部分なので、下のほうがくっつかない。 中から肉が盛り上がってくるのを待つことになるかもという。 あるいは、別の対策を考えるか。 いずれにせよ、1週間ほど様子を見て後のことという。 3日後、10日後に来ることになっているため、その時に判断することになるだろう。 診察後、薬をもらい、その全てを荷物にまとめた。 10日間の生活が、大きな黒いバッグに納まった。 10:00過ぎ、会計のコールがかかる。 いよいよお別れである。 少しの間の接触ではあったが、別れとは寂しいものだ。 特に同室のNさんには、いろいろとお世話になった。 がっしりと握手する。 彼の豪快な社会人人生をはじめ、いろいろな話を伺った。 奥様も闘病されている。 その折の居住まいも印象に残る。 Nさんは71歳というご高齢でありながら、6時間の大手術に耐え、10日間点滴のみの飲まず食わずで頑張られた。 奥さんともども癌を淡々と受け入れるその姿から、私は生きる姿勢について学んだ気がする。それは、死に対する姿勢でもある。 Nさんの姿は、私の中の深いところで発酵し続けていくことだろう。 ご夫婦で手を取り合い、前向きに頑張っていかれることと思う。 まだ先は長い。 悔いなき人生を歩んでほしい。 |