会計には、昨夕の面々が顔をそろえている。 お出迎えも来ている。 皆、晴れやかな顔だ。 家族には来なくていいと昨日電話した。 来てもらってもとんぼ返りになるだけだ。 「お大事に」と声を掛け合い、暑い日差しの中、私は車中の人となった。 ドアを閉めたとき、元の世界へ戻る人になった。 車の運転は、やはり楽ではない。 特に助手席の窓の開け閉めで手を伸ばすのは、アテローマの傷口のために厳禁と感じた。 うちに戻っても、当面腹ばい主体で、ぐうたら過ごそうと思う。 懐かしの駐車場に車を入れる。 大きな荷物をトランクから出して担ぎながら、さてこのヒゲ面を見てどういう反応をするだろうなあ、と楽しみである。 実は、入院して以来ヒゲをそっていない。 「ただいま!」 息子においでというと飛びついてきた。 が、顔を近づけると、手で突っ張る。 女房も娘も、来るなと逃げる。 ワーワーギャーギャーとひとしきり騒がしいヒゲ騒動が続いた。 古びた扇風機が回り、 水槽にはめだかが泳いでいる。 机の上には暑中見舞い。… 相も変らぬ日常がそこにあり、 私はそこに帰ってきた。 |