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■ダブルバインド3点セットによるパワハラコミュニケーション

【ドラマ】 【ハラッサーの支配の方法】
@
課長が、「この企画書目を通してくれるかな。あなたの意見を聞きたいの」
Aさんが、2時間後に意見をまとめて持って行くと、
「あ、あれ。もういいわ。時間がかかりすぎね。もっと早く出してくれないとダメよ。あ〜忙しい。仕事が山積みだわ」
@まぁ、まともな会社なら、即日意見を聞くなどというアンチョコな指示は出さないでしょう。指示は部下を鍛えるために出すもの。部下も仕事を持っていますし、考察を鍛えるための時間を与えるはずです。そして、意見が出てきたら、それについて検討するだけの時間を考慮しているはずです。
指示を出し→意見が出てきて→それに対してフィードバックする。このキャッチボールをきちんとやって始めて部下は育つし、信頼関係も育つのです。

にもかかわらず、2時間で意見をまとめて持っていくなんて、Aさんは優秀だと思います。ところが見もしないでダメ出し。つまりは、「最初から意見を聞く気なんてない」ということです(←ここがポイント!)。

しかも、このM課長、う〜む、うまいというか、いやらしいというか…実に巧妙にAさんの発言を封じているのです。それはまた後ほど(^^)。
@は次のように分解されます

「もっと早く意見だしてくれないとダメよ」 
→「早くないからペナルティ(罰)」<第1次禁止令>

「あ〜忙しい。仕事が山積みだわ」
→「忙しいから異議申し立てを禁ず」<第2次禁止令>

そう、2つの禁止令(ダブルバインド)のセットですね。
罰を与えたすぐ後で、巧妙に不服を申し立てるチャンスを奪っています。Aさんは、ただ言われっぱなしで黙って去るしかないのです。
G
「部長に言われて驚いたけど、あなたにパワハラしようだなんてちっとも思ってなかったの。でも、次の人事があるまでは異動できないと思うから、それまでは我慢してね。それに、このことが原因でキャリアに傷がつくのもイヤだし、お互いのためだから、あなたとは会話しないことに決めたから。」

G極めて巧妙な、ポイントを押さえた発言です。
パワハラでないことを明確に伝え、そう曲解したAさんが悪いと暗に責めています。
それで、次の異動でAさんを飛ばすことを予告し、それまでの間は無視することを宣告したわけです。
これによって、M課長は罪を相手に着せつつ、合法的に無視できる体制を作ったのです。

尚、ここにも極めて巧妙なコミュニケーションの罠が隠されています。
■Gは次のように分解されます

「次の人事があるまでは異動できない」
→「あなたに逃げ場はない」<第3次禁止令>

「お互いのためだから」
→「異議申し立てを禁ず」<第2次禁止令>

「あなたとは会話しないことに決めたから」
→「会話することを禁ず」<第1次禁止令>


こちらは見事な3点セットですねぇ(--;)。
閉塞状況にあることを伝え、
予め異議申し立てを封じた上で、
会話をしたら罰を与えることを申し渡しています。

まぁ、見事に身動きさせないコミュニケーション術です。これでは、なすすべがありませんね。

特に、「次の人事があるまでは異動できない」という言葉は、現状が閉塞状況であることをわからせると同時に、「次の人事ではとばす」と脅しをかけているわけです。つまり、現在だけではなく先もないよ、と告げているようなもので、ここまでくると、もうやめるしかないかと思うようになるのも無理はありません。


さて、読まれていて「Aさんも言い返せば良かったのに」と悔しい思いをしているあなた。
なぜ、あそこで言い返さなかったのか、と。
私なら、一矢報いてやるわよ、とか。


しかし、それをさせない巧妙なコミュニケーション術をパワハラM課長は使っていたのです。
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