| これからの人事への提言として、まず採用について中尾さんは次のように話す。 「いかに異質な人材を集めるかを考えるべきでしょう。 まだ学閥や学歴主義がはびこっているのが気になります。 特に理系の場合は教授とのつながりなど、過去のしがらみも大きいですから。 しかし同質な人材が集まった中では、なかなか新しいものは生まれてきません。 大きな変革が起きるときには、遺伝子変異がきっかけになります。 そのために、まず紹介派遣などを通じて様子を見る手もあります。 私も人事をやっていた頃、このような方法で、採用実績のなかった大学から正規採用につなげました。これも異論があって相当な手間がかかりましたが……。 しかしそういうことにトライして、一歩踏み出す価値はあると思います」 だが異質な人材を確保しても、マネジメントが旧来式では彼らを活かすことができない。 次に中尾さんは、脱工業化社会型のマネジメントの必要性を強調する。 「せっかく優秀な学生を採っても、たいてい3ヶ月くらいでやる気を失うケースが多いのです。 特に目立つのは、研究所などに配属された院卒の女性です。 入社するときは、男性よりも意欲旺盛で、非常に優秀な人が多い。 この日本社会で女子学生が大学院まで進み、技術者になるには相当な覚悟が要りますよね。 その決断をして努力してきた人たちですから、それはもう腹が座っています。 ところが管理者のテーマの与え方が悪いために、その力を伸ばせない。要するに男性と差別してしまうわけです」 では男性社員のマネジメントはというと、結局こちらにも問題はある。 「新人と言っても院卒レベルの人たちは、既に自分なりの方法論を持っています。 ところが管理者は、自分の方法論を押しつけるのです。 相変わらずの上意下達で、手足のように使おうとするわけです。 工業化社会が発展する過程で、中高卒の均質な労働力をマネジメントしてきた方法論が、そのまま通用すると思っている」 中尾さんが指摘するマネジメントの問題は、何も新人に限ったことではない。 違うカルチャーを背負ってやってくる即戦力、異彩を放つスペシャリストなどを、活かしきれないなどの現実もある。 「これからはOJTではなくOJE(オン・ザ・ジョブ・エデュケーション)が重要です。 相手の能力や状況に応じて、その都度どうすればよいかを考えて答えを出して行く。 一つのやり方を全員に体得させる“トレーニング”ではなく、その場に応じた最善の方策を創造する力を養う“エデュケーション”です」 トレーニングを要する職務の多くが海外拠点に移り、そのぶん国内においてはエデュケーションの必要性が増している、という言い方もできるだろう。ところが人材育成の概念がトレーニングのままだとすれば、組織が停滞するのは当然だ。 「入社して半年で、優秀な頭脳を持つ人材の目が死んでいく現実」を、中尾さんは何度も目の当たりにしてきた。 だからこそカウンセリングマインドで、組織を変えることに意欲を燃やしている。 そして同じ志を持つ人事マンにも熱い期待を抱く。 「やれることは昼飯の食べ方を変えることからでもいいですよ。 私は会社時代、いつもさまざまな部署の面々と、食事に出かけて話をしていました。 それだけでも視野が広がり、信頼関係づくりにもなる。 ところが人事担当者の多くは、いつも同じセクションの同じ顔ぶれで昼飯を食べている。 これでは自分たちの古い枠から抜け出せませんよ。 明日から、いつもと違う人と飯を食べに行ったらどうでしょう」 |