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【1995.02.10 NHKスペシャル:大韓航空機撃墜事件の検証】

 もう、10年以上も前になる大韓航空機撃墜事件
 トラブルは、様々な小さなミスや見過ごし、意図が重なって起こる。
 
 大韓機が後方から来たソ連機に気付かなかったこと。
 ソ連機の警告が伝わらなかったこと。
 そんな緊迫した状況の中、折しも大韓機が機種を上げ上昇に転じたことが、ソ連機にとっては、上昇による減速のために戦闘機の飛行能力を失わせる作戦とみなされたこと。

 ソ連機パイロットは大韓機が逃げると悲鳴を上げ、…そして、最終命令が下った。

 アメリカはレーダーで大韓機の侵入を知っていたはずである。
 が、大韓機への警告はなされなかった。

 冷戦構造の最中、ソ連叩きのスケープゴートに269人がされた…。



 が、しかし、それにしても何故、大韓機は虎の穴に首を突っ込んだのか?
 問題はそこである。

 そもそも、領空内へ侵入しなければ─。
 機長はなぜそこへ行ったのか?
 スパイでないとすれば、その心理に迫るしかない。

 後続機の先輩機長がこう語った。
 当時の会社は「コスト」にうるさかった。
 燃料や時間をロスする者には「始末書」が待ち受けていた。

 そのベテランの機長が飛び立ったとき、いつか自動飛行装置のミスに気付いたはずだ。
 が、彼は空港に戻らなかった。
 初歩的なミスのために時間と燃料を無駄にし、始末書を書く無能の誹りが怖かったのだ。

 彼は、269人とプライドを天秤にかけ、そして269人よりも自分を選んだ。
 そして昔ながらの羅針盤で目的地へ向かおうとし、領空を侵犯したのだった。

 彼は、自分の属する組織の自分に対する評価が怖かったのだ。

 ソ連機のパイロットも同じである。
 パイロットは、万一取り逃がしたときの彼に対する軍(組織)の評価が怖かったのである。

 組織の無言の圧力が、個人を思わぬ方向へ走らせる。
 その時、本人は冷静なつもりなのだ…。



 家族も組織である。
 厳しく怒ればいいというものではない。
 子供を仕付けようと怒れば怒るほど、子供はうそつきになっていく。
 何らかの言い訳を覚えていく。
 責任転嫁を覚えていく。

 大韓航空や軍隊のような「罰する組織」が、個人を追い詰めていったのだろう。

 自分の組織が人をどう評価しようとしているのか、どこへ向かおうとしているのか、今どのような状態にあるのか、ぼくは常に見続けていきたい。

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