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【1991-2005 JR西日本事件−尼崎脱線・転覆鉄道事故より俯瞰】

13、統合失調症を生む風土

 自分を偽ってまで嘘のレポートを書かせられる「日勤教育」。
 この現場は、まさしく「ダブルバインド」の現場だった。

 ダブルバインドとは、最初に「指示に従わないことを禁ずる命令」(第一次禁止令)が出し、次に「異議申し立てを禁ずる命令」(第二次禁止令)を出して二重に拘束(ダブルバインド)し、こちらの命令どおりに文句を言わせず行動を強制することを言う。

 この場合、逃げ場があると効果がなくなるため、「逃げることを禁じる」状況や命令を第三次禁止令と呼ぶ。

 運転士は、先ず管理者の取り囲む部屋に隔離され逃げ場を失う。
 物理的に逃げたとしても、解雇が待っているため心理的にも逃げられない。あらかじめ、第三次禁止令の中に身を置くことになる。

 そして、「自己反省文を書け」と命じられる。自殺した運転士のように書くことがなくても強制される。これが、第一次禁止令である。
 そこで、運転士が何か言っても「そんなことを言っても、お前はミスをした」(新聞より)と言われて異議申し立てを封じられる。これが第二次禁止令である。
 ここでは、ものの見事にダブルバインドが完成しているのである。



 ダブルバインドに遭うと、被害者はどうなるか。
 自分の感情は押し殺したまま、一方的に相手の感情や言い分を受け入れざるを得ない立場に押し込められてしまうため、誰でも操り人形にならざるをえない。

 その内、自分の行動が自分のモノではないような“操られ感”を感じるようになる。
 私もかつて、ダブルバインドを行使する上司の直下にあって苦しめられたことがあるが、そのとき、「あぁこれが、統合失調症(旧精神分裂病)患者が感じると言う“操られ感”か…」と、実感したことがある。

 そもそもダブルバインドとは、統合失調症(旧精神分裂病)の子どもをもつ家族を調査する中で、ベイトソンという人類学者が発見したコミュニケーションパターンなのだ。
 簡単に言えば、人間をやめて俺の指示通りに動くロボットになれと言われているに等しい。
 第三次禁止令の中にあって逃げ場がなければ、結局、現実世界から逃げ出し心の中に閉じこもることになる―それが、統合失調症の発症と言うわけだ。



 ダブルバインドから逃れる方法は一つしかない。
 それは、ダブルバインドを行使する人間(支配者)から逃げることである。
 もし、それが組織ぐるみで行われているのであれば、あなたはその組織から逃げ出すしかない。自分の人格を破壊され、人生を奪われることを考えれば、一刻も早く職場を去ることだ。
 死ぬ気になれば、人間いくらでもやり直しができる。

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