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【1991-2005 JR西日本事件−尼崎脱線・転覆鉄道事故より俯瞰】

15、格好の的となった高見運転士

 ここまで読まれた方は、事故が複数の要因が重なった事故、というようなものではなく、もはや組織犯罪であることがおわかりになると思う。そして、JR西日本という組織がサティアンのごとき監獄のような組織であったことも分ると思う。

 真面目で明るい青年だったと言う高見運転士。
 ここでは、その高見運転士の立場と気持ちになって読んでみてほしい。



 新幹線を運転することを夢見て2000年に入社した高見運転士は、車掌時代の2002年に、オーバーランした時に非常弁を引かなかったとして訓告処分を受け、翌年「目が虚ろだ」と乗客から指摘されて厳重注意処分を受けた。
 2004年に運転士になるが、その1ヵ月後に100メートルのオーバーランをして13日間に及ぶ「日勤教育」を受けさせられている。

 字面だけ見ると、3度訓告を受けるということはどこかに問題があったのではないかと世間は受け止めるかもしれない。
 新聞も、「23歳で3回も処分を受けているのは多すぎる」という運転士経験者の談話を安易に掲載するのは避けるべきだ。これでは、「置石があったと思われる」と述べたJR西日本の情報操作と同じである。

 私には、スキー大会に出場するなど活発で社内に知人も多く明るい性格と、この3回の処分から受ける印象がどうにも結びつかないのである。



 私が内心思うのは、2001年の運転士自殺事件がそうだったように、高見運転士もスケープゴートにされたのではないかという思いだ。仲間から信頼を得ている人間をスケープゴートにすることが最も効果があるからである。
 もう一つは、若い内に徹底して効率優先の価値観を刷り込んでしまおうとしたのではないかということだ。

 というのも、第1回目の非常弁の件。
 非常弁を使えば、乗客に何らかの衝撃は与える事になるであろう。そもそも衝撃を与えてまで非常弁を使わなければならなかった状況なのか?高見運転士はむしろ常識的な判断をしたのではないのか。

 しかし、JR西日本にとっては、何が何でも(乗客にショックを与えることよりも)「時刻」を優先することを教え込むための格好の事例だったに違いない。
 ここに新人の時から、効率優先の価値観を叩き込んでいくというJRの姿勢が見え隠れするように思える。
 そして、その非常識な価値観を知った時、夢見ていた高見運転士はあまりのショックに呆然としたのではないか。トラウマとなる傷を心に負ったのではないか。



 全く予期せぬ出来事は無防備な心にぐさっと入ってくる。それがよいことであれ、悪いことであれ、だ。ただ良いことはやがて思い出の中に解消されていくが、悪いこと、理不尽なことは自分の中に消化されていかない。

 そして、いつまでも消化されずに残っているそれが不意打ちのように日常の中に顔を出す。なんの脈絡もなく突然光景が眼前し、どうしようもなくなる人を私は知っている。
 高見運転士が「目が虚ろだ」ったとき、彼はトラウマに襲われていたのではないか?



 彼は徹底教育を受け、昨年運転士になった。
 そのときは、もはや喜びよりも恐怖が先にあったのではないか。

 私は、ある部のメンバー全員が信じられないような仕事上のミスを頻発させるのを見て驚いたことがある。なぜなら、責任を持って仕事をしていれば起こりえないと思うようなミスばかりだったからだ。皆、魂の抜けたような仕事をしていたのだ。

 そして、そこを牛耳る上司を見て合点がいった。
 その上司は人を支配し、操る上司だった。
 皆、仕事の中身ではなく、その上司の顔色にあわせて仕事をしていたのである。操り人形にすると、自分のも意通りにことが運ぶと思っているのは上司だけで、実際は、その上司がすべてのミスの誘発源だった。
 高見運転士もそのような状況下でミスを犯したのではないか。



 そして、そのミスを犯したとき、待っていたのは13日間にも及ぶ「日勤教育」だった。
 想像してみてほしい。
 過去に自殺者を出したいわくつきの「日勤教育」。
 社内では相当の噂になっていることは間違いない。
 そこに送り込まれ、7,8名の管理者に取り囲まれて孤立無縁の中、罵詈雑言を浴びせられながら自己否定の文章を書かされるのである。
 それが、朝出社して帰るまで続くのだ。
 しかも、期限は分らず、また今日も、また今日も…と、結局延々2週間もの長い間続いたのである。

 私は、まともな人間ならば精神に異常をきたしてもおかしくはないと思う。
 怒りをもって断言する。
 これはリンチであり、人格破壊であり、犯罪である。

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