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【1991-2005 JR西日本事件−尼崎脱線・転覆鉄道事故より俯瞰】

28、ポリシーの怖さ

 誰が加害者でもない。全員が被害者―そういう気がします。
 社長を含めてすべての人を追い込んだのは、「スピード」というポリシーです。

 堤義明氏のことを書いた文の中で、私はこう書きました。
『「家訓」ではなく「家憲」です。憲法ですから、犯すべからざる神聖なもの―言い換えれば、絶対に服従しなければならないものなのです。ほんの少しの逸脱も許されません。』

『彼は、経済社会の常識ではなく、「家憲」に従って行動しました。
 先に挙げたシェフの行為も、「家憲」のポリシーにそむく行為だったのでしょう。
 それがどのような逸脱であれ、「家憲」からの逸脱は許されることではありませんから、更迭したわけです。その時の「激怒した」様子を独裁的な感情的な振舞いとしてマスコミは見ているようですが、逆鱗に触れた理由は「家憲」から逸脱したからだと思います。
 そして、激情に駆られて更迭したのではなく、「家憲」に忠実に、何を思い悩むこともなく更迭したのだと思います。』

『思い悩んだ末に大人と同じ大きさのステーキを出したシェフの情状を酌量することもなく更迭したことも、土地神話が崩れてもなお土地にしがみつくことも、Y氏にとっては選択の余地のない行為だったのではないでしょうか。「家憲」に照らせば、それ以外の道は考えられなかったのだと思います。』

『Y氏は、「君臨」していたのではなく、「隷従」していたのです。
 Y氏も含めて、西武王国を支配していたのは、「家憲」でした。』



 私は、堤義明氏自身も「家憲」の犠牲者だったと思っています。
 堤氏自身が、既に家憲の “手足”としての存在でした。自分が手足であるために、他の人も手足として扱います。そこに何の矛盾も感じません。
 まるで、「家憲」に書かれたプログラムを忠実に遂行するロボットのように、堤氏はプログラミングされた人生を生きたわけです。
 西武王国に住む人全員が「家憲」に支配されたのでした。



 すべての仕組みはポリシーに即して作られます。
 たとえば明治の体制は、社会の基礎を『皇基』つまり天皇に置く「五箇条の御誓文」をポリシーとして作られました。

「『版籍奉還』で土地も民も大名から奪い天皇のものとした。代わりに置かれた知事は他藩出身者で実権はない。これで地方の力を奪った。今、地方に活力がない遠因はここにあると思うよ。次いで『戸籍法』によってその『臣民』を掌握した。そこから兵を募る『徴兵令』は、藩の軍を国の軍へと集約するためのものだ。その軍隊を維持するのにお金がかかるが、そこは『地租改正』で税収を上げた。つまり、ポリシー通りに社会システムが作られていったわけだ」
(「あきらめの壁をぶち破った人々」より)

 そのポリシーの通りに社会の仕組みが再編成されていったわけです。



 社会体制の改革と同様に組織改革も、ポリシーがなければ始まりません。
 「我々が創った『ボード想定問答集』があったろう。あれが、ポリシーの原点だ。そのポリシーに則って、推進メンバーは現実的な設計図を引きはじめた。つまり、ポリシーが魂とすれば、その魂の目指す方向に沿って現実的な設計図を作った推進メンバーは、細胞を創る情報を持つ遺伝子だよ。次にコアメンバーが、その遺伝情報を基にまず細胞壁、つまりシステムの骨格を構築していった。その外壁ができた所で入ってきたのが運用責任者だ。ここで細胞にコアが入ったんだ(略)」

「で、SOP分科会は設計図を基に情報の伝達ルールと経路を作る。いわば神経構築部隊だ。そして、その経路の中心に運用責任者が位置し、運用担当者が経路のルールを守りながら動きはじめることになる」(同上より)

 私が行った組織改革が成功したのも、始めにポリシーをしっかり押さえたからです。そのポリシーに基づいて新たなビジネスプロセスのシステム及びルールを構築していったのでした。



 ほかにもいくつも例を挙げることができますが、すべての仕組みは、ポリシーに則って作られます。というよりも、『機能というのはポリシーを実現するための手段』であり、『組織というのはポリシーを体現したもの』なのです。

 JR西が「安全軌道」を捨て「高速軌道」に変えたのも、「スピード」というポリシーを実現するためです。
 JR西がATSという機能を設置していなかったのも、「安全」というポリシーがなかったからです。

 組織と言うものは、良くも悪くもポリシーの達成に向けてまい進します。
 ですから、間違ってはならないのは、どのようなポリシーを持つのか、ということなのです。
*いきなり文体が変わりますが、気分のままに書いておりますのでご容赦を(^^;)
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