| 最後に、いかなる組織も陥る罠がある。 それは、どのような組織であれ、細胞から社会システムにいたるまで自己保存の本能を持つということだ。 これが、より高次の次元で発揮されれば、全体最適のために部分が変化するだろう。 しかし、各部門がクローズドな組織である場合、個々のセクションが自己保存にまい進する。 コーポレートが成果主義を導入する際に説明を聞いたが、そのとき思ったことは、あぁ、人事は“守り”に入ったなということだった。成果主義導入の主人公になることで、影が薄くなっていた人事の復権を目指している。そういう印象を持った。 というのも、私の観点から言えば、人事機能をどんどん現場に委譲していけばよいと思っていたからだ。 実際、私がやってきた仕事はそういう仕事ばかりだった。 初めて人事に移った時、やった仕事が合併会社への新たな人事制度の導入と教育制度など文化の新規構築である。 それを成し遂げて赴任した先では総務人事機能の分離、さらに次の赴任先では総務人事機能の設置を行った。機能設置とはいっても、要は人を教育して育て、判断ミスをなくして周囲に納得させ、その実績を持って権限を勝ち取るわけである。 そうやって、一つの事業場の独立に貢献したこともある。 つまり、会社生活の間中、そういうレールしきばかりやっていた。 そして、それらの組織は的確に回り始めた。 それをやってきた私から見れば、人事機能はどんどん現場に移植していけばよい、というのが考えだった。 ところが、コーポレートの人事部本体は昼休みになると部長以下徒党を組んでランチに行く。 「おい、昼休みくらい他部署の人間と飯を食えよ!」 と思ったものだ。 私にとって昼休みは、いろんな人間と飯を食って情報を収集する場だったからだ。 そこから、問題点が見つかったり新たな提案の源になることがよくあったし、何より会社の動きがよくわかった。そして、人的ネットワークが広がった。 いずれにせよ、オープンな組織は「変化」に対して柔軟に対応しようとする。 が、クローズドな組織は現状を守ることにエネルギーをかける。なぜか。 クローズドな組織は、「危機感が見えない」からである。 これが、一般にクローズドな組織の陥る罠であり、会社の中でも閉鎖性の強い人事部が最も陥りやすい罠なのである。 そして、存続のために頭のよい方たちがあの手この手で生き残り策を考えるわけだから手に負えない。 クローズドな組織であるため、本質的な危機感が見えないことが、世の中の動きから取り残される5つめの要因である。 (クローズドな組織の陥る組織維持の慣性の法則) |