|
過去に何人も部下をうつや左遷でつぶしてきたこの上司(ストレッサー=ストレス要因)に、どのように私は反応したのか。
今回は、ストレス理論を基に見てみよう。 この理論を予備知識として知っておけば、ダブルバインドに耐え得た理由もわかりやすくなるからだ。 以下、()内に専門用語が出てくるので、煩わしい方はそこを飛ばして読んでね。 「ストレスのメカニズム」は、ある「出来事」を「個人がどう認知&対処」し、どのような「結果」があらわれたかで説明される。まず、そのメカニズムを概観しておこう。 ストレスとは、「刺激(ストレッサー)にさらされた生体の反応」【セリエ】のことをいう。 刺激を受けると、 それが自分にとってどの程度の脅威なのか(1次評価)、 またどのように対応すればいいのか(2次評価) という判断(ストレス評価過程)をし、 それに基づいて対処行動(コーピング)を取る。 うまくいった場合はそのストレス環境に適応できるが、うまく行かなかった場合、 不安(情緒反応)やドキドキ(身体反応)などの心身反応や、 胃潰瘍(病理反応)、 記憶力低下、アルコール依存などの不適応行動となって 症状(ストレス反応)が現れる。【ラザルス&フォルクマン】 さて、私は上司(ストレッサー)から、『「こういうことは事前に相談しろ!」と怒鳴られる』というストレスが加わったとき、これは「脅威」だと「1次評価」(*)をした。 (*1次評価には、「無関係」「無害」「挑戦」「脅威」「被害」の5つがある。挑戦は肯定的、脅威は否定的にとらえ、被害は既に実際にストレスを受けたという意味。 このケースを厳密に言えば、「被害」を受けたと同時に将来に対して「脅威」と感じたということになる) そして、『自己裁量で動いていたことも一言言っておいた方が無難だ』と「2次評価」をして、『判断を仰いだ』(コーピング)。 ところが、『「そんな話までいちいち俺にもってくるな!」と怒鳴られ』るというストレスを受けて、『混乱』(情緒反応)した(→ストレス反応)。 これが一連のループである。 この一連のループが終わる段階で、必ず新たなストレスが付加されている。 ストレスの高原状態が続くわけだ。 そのつど、あらたなコーピングを試みるが効果がない。 逆に、試みれば試みるほど、あらゆるコーピングが無効であることを思い知らされていく。 すると、対処法の検討(2次評価)の中で、良い結果をもたらす対処法を思いつかなくなり(「結果の期待」ができなくなり)、またそれをうまく出来るだろうという自信(効力感)もなくなる。 最終的に行きつくのが、『動かないこと』というコーピングである。 コーピングというのは、そもそも対処「行動」のことであるから、行動しないという対処「行動」に追いつめられるということは、究極のストレスがかかっているということに他ならない(後で別の解釈を書きます)。 その結果、『全身の神経がピリピリ』するという身体のストレス反応が出てきたわけである。 最初にストレスが加わって、最後に心身反応が出てくるまでの長期にわたる過程を「汎適応症候群」と呼ぶ。それは、次の3段階を経る。 「警告反応期」→「抵抗期」→「疲憊期」 上記は生体刺激に対する反応を整理したものなので、それをこの件に当てはめると次のようになろう。 @警告反応期(ストレスに対するショック反応と、それから回復する過程) 最初に怒鳴られたときに『戸惑い』(ショック反応)、次の対応策(コーピング)を考えて一時回復する。 A抵抗期(ストレスに身体が慣れ、見かけ上安定している時期) その上司が常にストレッサーとして現れてくることに慣れ、あれこれとコーピングを試行錯誤している時期。 B疲弊期(身体が抵抗力をなくし、再びショック反応を起こす時期) あらゆるコーピングが無効だと判明し、これまでの長期にわたるストレスに疲労困憊し、防衛以外に手がないため神経だけがピリピリと警戒し始めたとき。 ちなみに、 「コーピング」というのは、『危機的状況を突破する代替行動』【クローバー】。 「防衛機制」は、『葛藤&欲求不満による破局を予感し、それを避けて自己を守るために無意識にとる行動』。 防衛機制が強迫的、無意識的、過去に拘束されるものであるのに対して、 コーピングは目標的、意識的、未来志向的。 要は、ストレスのある状況に”攻め”で対応するのか、”守り”で対応するのか、という違いで、この2つは対概念である。 この事例で言えば、“コーピングが無効だと判明したとき、「抑圧」という防衛機制に移行した”と言う事ができる。 尚、これまで、コーピングと防衛機制の関係を論じた本はないように思う。また、ダブルバインドとストレス理論を合わせて論じた本もないので、ここを読まれている方は、理解が深まってお得です(笑)(→そのうち、本にするかも ^^;) さて、この状況までくると、もはや抵抗をあきらめている状態なので、それが長く続けばやがて心身の病気になっていっただろう。 では、どのように耐え、回避していったのか。 いよいよ次(このシリーズ長くってスミマセン)。 (…それにしても、“学問”というものは、現象を細かく細かく分類整理していくものなのね〜と思ってしまう) |