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プロジェクトのテーマの選び方

4.「創造」のためのプロジェクト

 一方、仕組みの構築を行う場合、トップダウンで一律に仕組みを押し付けようとしてもうまくいかない。トップがやるべきことは、どういう会社になりたいのかビジョンを示すこと。そのビジョンと現実とのギャップが現場に見えれば、ビジョンに近づくためにはどうすればよいのかという提案が現場から上がってくる。

 トップがやるべきことは、どの現場を最優先すべきかという優先順位の決定と人の配置である。
 たとえば、私が4年間率いたBPRプロジェクトは、その緊急性と重要性が認められた結果、紆余曲折があったがIT部門から専任が2名配置されるという大英断がなされた。



 さて私がやったのは、ERPパッケージを導入してそれに働き方を合わせるという類のプロジェクトである。具体的には、ドキュメンタムというプロセス管理のツールを利用することにより、業務プロセス自体を変えてしまおうと言うものだ。

 そのシステムを使ってもらうためには、専門分野ごとに違う法規制をこえてルールをすり合わせたり、研究所長の立場や職務権限をこれまでと変えて別の権限責任者を設置するなど、大幅な職務権限規定の変更を伴うものだった。
 当然ながら、ヒエラルキーやセクショナリズムと真っ向からがっぷり四つにくまなければ成功はおぼつかない。

 これをトップダウンで進めれば、関連事業場のトップの抵抗にあって簡単に頓挫していたであろう。そのため、誠意をもって足しげく通い、本社と同じ段取りを事業場でも行い、また様々な仕掛けや工夫をするのだが、詳細は拙著「あきらめの壁をぶち破った人々」に譲る。



 ここで述べたいのは、その本でも現れているように、仕組みを創造するプロジェクトは、軍隊型で行ってはいけないということである。
 なぜなら、プロジェクトのプロセスそものが意識改革の過程であり、意識は命じられて変化するものではないからだ。

 では、どのように意識は変わるか。
 それは導入するシステムと現実とのギャップを個別具体的に議論なする中で徐々に理解し、身につけていくものなのである。意見を出し合うことによって、最初はうすっぺらい理解だったものが、だんだん立体的に理解するようになってくる。
 つまり時間をかけて議論をすることが重要なのである。
 このようにシステム導入までのプロセス自体に意味があるとき、闇雲に急いでゴールを目指すことには何の意味もない。

(ただし、最初は泣かず飛ばずだったプロジェクトも、メンバーの気持ちに火がついて以降、ぐいぐいと前進し始め、結果的に当初予定より半年も早い稼動となった。これは、メンバーの気持ちに火をつけた成果である。詳しくは、「あきらめの壁をぶち破った人々」で)


 ついでに言えば、「意識改革」は目標にはなりえない。
 新たに目指す業務プロセスなどのルールや仕組みがあって、それを現実に導入するための議論を行う。その議論を行う過程で結果的になされるのが、意識改革である。
 「意識が変わった」というのは結果指標であって、それ自体を目標とすべきものではない。

 つまり、働く人の意識を変えたいのであれば、目指すべき業務プロセスなどの具体的なゴールが必要なのである。


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