
世代の壁、性別の壁、組織感情の壁、レッテルの壁、プライドの壁、思い込みの壁、不作為の壁、
こうあるべきという価値観の壁、仕事に感情を持ち込むなという常識の壁など、会社に属していると、
自分の周りには様々な壁が存在していることに気付く。
それらの壁はやがて「あきらめの壁」となって、「言っても無駄」「やるだけ損」といった負の感情へと結びつき、気が付くと何かもやもやイライラした毎日だけが残っていく──そんな組織の“生活習慣病”にかかってしまっている企業は少なくない。
会社規模が大きくなればなるほどその病から抜け出すことが困難になっていく。
本書はそういった大企業を舞台とした実用企業小説だ。
実用企業小説とは、実話をドラマ仕立てにすることにより、普通の経営教科書やビジネステキストでは得られない実践ノウハウを伝授する経営書のことである。
ストーリーの舞台は、問題や不満を抱えながらも変化を拒んできたある大手化学会社。
数多くの企業が失敗に終わっている、システム導入・業務プロセス変革・意識改革の三位一体の 「情報技術(IT)を用いた業務改革(BPR=Business
Process
Reengineering)」を見事に成し遂げるまでの過程を事実に基づいて描いている。
登場人物はどこの日本企業にもいそうな、熱しやすく冷めやすい思いつき突進型の部長や部下は自分の手足としか思っていない統制支配型の次長など困り者の上司、クーデター型・日和見型・サイレントマジョリティ型の3つに分裂した部下などで構成されている。
現実の状況の中、業務改革の事務局のリーダーである主人公と仲間たちが、次々と立ちはだかる抵抗勢力や困難を一つひとつ乗り越え、業務改革を成し遂げていくプロセスをフィクション形式で、登場人物の心理までも細かく描写しているのである。
本書を事実に基づいたストーリー仕立てにしたことに対し、中級産業カウンセラーであり家族相談士(家族カウンセラー)である著者は、「知恵は状況の中で気付きを伴った学習によってしか身に付けることができない」という考えのもと、読者が文脈において主人公とその仲間のとる行動を学ぶことで初めて、知恵を身に付けることができるからだとしている。
実際、経営教科書やビジネステキストに比べ感情移入しやすく、読者は容易に自分の会社の上司や同僚と本書の登場人物や社内環境と置き換えて読み進めることができるだろう。
また、どの企業もが自社の命運を握るものとして認識している「ITを用いた業務改革」をストーリーの中軸に据えているため、
実用性が高く、同様の問題を抱えた企業にとっては業務改革成功への良き指南書となるに違いない。
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